結婚式や結婚のかたちはさまざまですが、時代による傾向や変遷というものが顕著に表れているもののひとつに「婚約」の期間が短くなっていることが挙げられると思います。一方、妊娠が結婚のきっかけになったご夫婦や、長く一緒に暮らしてきたカップルは、必ずしも婚約指輪を「必要なもの」とは考えないことが多いように思います。
よく聞くのが「絶対要らないということではないので、もしどこかで気に入ったものが見つかれば(買う)」というフレーズ。たまたま入ったお店でコレ!というものに出合えたり、探し始めてみたら思いのほかこだわりが出てしまったりということもありますが、結婚式が過ぎても「まだ」というカップルも。
何でもない日に買うようなものでもないから、1年後の記念日あたりに……なんて言っているうちに、何年も過ぎてしまうということもあるようです。
例えば、結婚式で着る衣裳を「結婚」そのものにたとえることがありますが、「もっといいものがあるかもしれない」となかなか決められなかったり、まわりから見たらベストマッチなのに、本人は意外と気づいていなかったり……ということがあります。勇気ある決断に必要なのは、タイミングなのか、完璧なリサーチなのか、他者を信頼することなのか。
これは私の友人夫婦の話ですが、結婚が決まる前から一緒に暮らしていたこともあり、また、結婚式を挙げなかったので「新生活」の買い物にはとくにタイムリミットがなく、唯一と言っていい、結婚のためのスペシャルなものが結婚指輪でした。
私からの結婚祝いも、リクエストされた電化製品で、のし紙どころか包装紙もかけずに配送で贈りました。
婚約指輪のほうはすっかりタイミングを逸してしまって、ここでも「買わないと決めたわけではないんだけど」といつもの調子で話していました。
仕事柄、価値観もタイミングもさまざまであることを承知していたので、とくに追い立てることもしませんでしたが、実のところ「きっと買わないだろうな」と思っていました。
しかし、帰省をきっかけにお母さんのダイヤを譲り受けることになり、婚約指輪にリフォームするという選択肢が急に浮かび上がったそうです。私自身もこのときに相談されたことをきっかけに調べたりとネットワークが広がって、ジュエリーのリフォームのポテンシャルを知ることになりました。
宝石の価値というか、特別なジュエリーだけがもつ「受け継ぐ」「ともに時代を生きる」というような奥深さを感覚的に知ることができました。
それからは、婚約指輪についての相談を受けるたびに、将来自分の娘や息子のお嫁さんに譲るようなものになるかもしれないという未来のストーリーに思いをはせることをお話しするようになりました。
あるいは、シワシワになった何十年後かの手に、この指輪が輝くことを想像したりすることも、婚約指輪選びのもうひとつの楽しみになるような気がするのです。
婚約指輪の価値は特別
指輪を「受け継ぐ」事や、何十年後かの手につけて指輪が輝く事を考えると、婚約指輪というものの特別さががわかるかと思います。